いま何かと話題の国、イラン。
「イスラム原理主義の国」
「ペルシャ帝国の末裔の国」
「北朝鮮と同じような危険な国」
日本人からすると、遠すぎてピンと来ないですよね。
特に日本で耳にするイランのニュースって核開発&テロ!みたいなロクでもない話題ばかりで、「怖い」「国際法ガン無視」「狂信的」みたいなイメージを持ちがちだと思います。
ただ、実際はイランって「熱心ではないイスラム教徒も多い」「危険でもない」「20カ国以上旅行した中でトップクラスに人が優しい」国でもあります。
少なくとも
「21世紀のいまも宗教を盲信し、全く理解し合えない危険な人々」
なんてイメージは確実に違うと断言できます。
2025年6月13日に始まったイスラエル空爆のタイミングで、実際にイランを観光していた人間として、「実際にイランってどんな国で、どんな人が住んでるの?」って事をお伝えしていきます。
※上記インスタは13日の夜、母親に「イスラエルが15日も空爆するかも」ってニュースを聞いて、朝起きたらすでに空爆開始されていたときの図。
テヘランから遠く離れていたのもありますが、ヤズドのホテルのペルシャ庭園で迎える朝食は平和そのものでした。
イランという国家の特徴

・ペルシャ帝国の末裔
・イスラム教シーア派の盟主(少数派の宗派)
・イランはアラブ人の国家ではない
・イランは日本の4倍の面積を持つ巨大国家
・首都テヘランは人口1000万人の巨大都市
・砂漠から日本に近い田園風景まで様々な地域がある
・国内でテロはほとんど起きていない
・治安はかなりいい(夜でも女性が1人で出歩くレベル)
・ヒジャブ(女性が頭につける布)をつけてない人も多い
・若い人を中心に非ムスリム(非イスラム教徒)も多い
・もう40年近くアメリカと仲が悪い&経済制裁継続中
・何ならアラブはじめ周辺国家からも嫌われてる
イラン=中東=危険なイメージとは裏腹に、僕がイランに約2週間滞在した感想は「かなり安全な国」でした。
中東にありがちな体制派&反体制派による内戦ともほぼ無縁(限定的にはある)だし、それに伴ってテロなどもほぼ発生しないし…
宗教独裁なんだから危険では?と思いきや、今や宗教警察もだいぶ形骸化されていて、女性が髪を隠さずに街中を堂々と歩いているのも珍しくないし…
少なくとも日本人が中東に抱きがちな
「内戦&テロだらけでグチャグチャになってる危険な国」
というのはイランには全く当てはまらないです。
そしてアメリカ憎しの狂信的イスラム教徒!というのはイラン政府が打ち出しているイデオロギーであって、国民はアメリカ嫌いでもなければ、ムスリムじゃない人も普通にいるのが実態です。
ただ、今回の戦争で国民の間でもアメリカ嫌いが再燃&もともと悪印象を持っていなかった若者層までアメリカ嫌いになりそうな事は想像できますが…
イラン人=シーア派でありペルシャ人である
僕ら日本人は中東=アラブ人と考えがちですが、中東には大きく分けて3つの民族がいます。
・テュルク系(トルコ系)
・アラブ系
・イラン系
つまり、イラン人はアラブ人ではありません。
(当たり前といえば当たり前ですが、知らない人も多いと思います)
僕はイランに旅行する前
【イラン人は「ペルシャの末裔」「シーア派の盟主」どちらで呼ばれるのが嬉しいんだろう?】
と疑問に思っていました。
要はイラン人はどちらに自分のアイデンティティを置いているのか?という疑問です。
そしてイランを訪問してみて、彼らの軸足は「ペルシャ人にあり、他のムスリム(特にアラブ人)と一線を画すためのシーア派でもあるのではないか?と感じました。
そもそも、イランってアラビア語じゃなくてペルシャ語を使うんです。
イスラム教って原則的にはアラビア語でなければいけない(神の言葉を別言語にしてはいけない)ので、生活のためのペルシャ語とお祈りのためのアラビア語を使い分けないといけません。
実際、イランが7世紀にイスラムに征服された当初はアラビア語を使ったそうです。
ところが、アラビア語の文字だけ拝借して、わざわざペルシャ語という新しい文字体型を作り出し、イスラム国家となった今でさえイラン人はペルシャ語を話します。
だからイスラム教の中で少数派であるシーア派であることも
「俺達はイスラム教だ。でも、アラブ人とは違う」
という彼らなりのアイデンティティが見える気がします。
ちなみにイランで現地人に「サラームという挨拶はアラブ人の言葉だ。だからドゥルードというペルシャ人の言葉を使うといい」と言われた事がありました。
この「他とは違う」という誇りと自信(ある意味では傲慢さ)が、イスラム教の宗派も独特、政治的立ち位置も独特なイランという国家を作り出しているのではないかなと。
イラン人は「狂信的な原理主義者」なのか?
アルゴというイラン革命を描いた映画があるのですが、この映画の中でイランに飛行機が到着した途端、乗客の女性が一斉にヒジャブ(髪を隠す布)をつけるシーンがあります。
また、2022年にはヒジャブ(頭につける布)の着用が不適切とされた女性が、宗教警察に捉えられて投獄死したニュースが流れたのはご存知かもしれません。
そもそも、日本人からすると宗教警察って響きからして異様ですよね。
(イランに限らずイスラム圏にはそれなりに存在する仕組みです)
でも、僕がイランを旅行した2025年6月において、宗教警察はだいぶ影響力を失っているように感じました。
ヒジャブをしない女性はもちろん、渋谷で見かけそうなパンクファッションで歩く女性もおり、「女性はすべて黒い布を全身にまとっている」と考えるのは間違いです。
実は、今もヒジャブ着用は義務なのですが、2022年の大規模なデモ以降、「なし崩し的に黙認するしかなくなった」ようで。
逆に言うとデモの要求を黙認しなければいけない程度には、イラン政府の体制は決して盤石ではないとも言えます。
あと、イランにはムスリムじゃない人もいます。
キリスト教の教会もあるし、何ならユダヤ人も多く住んでます。
(イスラエルを除いてユダヤ人が一番多く住んでるのがイラン)
そして、そもそも宗教を信仰してない(イスラムも含めて)人もいます。
僕がテヘランの宿で出会ったイラン人(南部の島出身なので、革新的な都市部の人間ではない)は、「自分はムスリムじゃない」「若い人ほど信仰心は薄い」と話してくれました。
他にも、アザーン(お祈りの時間をつげる1日5回の放送)とともに道端で礼拝を始めるなんてこともないし、監視&密告社会の雰囲気を感じることもないです。
また、ムスリムでないことを咎める人もいません。
明らかにアジア人である僕に対して、イスラムの祝祭にも「おう、お前も参加してけよ」って感じで声をかけてくれる人ばかりで、「異教徒は許さない」なんて人はいませんでした。

ちなみにこの祝日はイスラエルの攻撃が始まった日なのですが、特にピリピリした様子もなく皆で進んでいき、結局ご飯がタダでもらえました。(信徒ではないのに貰ってしまってつくづく申し訳ない)
イード・アル=ガディールというシーア派独自のイベントっぽいです。
国家としてはイスラムを重視しているけど、じゃあイラン国民が「イスラムこそ全て!」「異教徒は殺せ!」なんて考えているかといえば、それは全くのノーです。
なぜ宗教国家なのにイスラム教離れが起きているのか?
完全に私見ですが…政教一致が原因です。
国レベルでイスラムを推奨してるんだから、より強力な宗教国家になるのでは?と僕も思ってましたが、政教一致だと政治の失敗=宗教の失敗になるんですよね。
暮らしが良くならないと「あれ?神様に祈っても俺達の生活よくならくね?」となって、逆に宗教にヘイトが集まってしまう諸刃の剣です。
イランはいかにして「嫌われ者」国家になったのか?
ぶっちゃけ、イランは嫌われてます。仲間がいません。
アメリカとイランの関係
→1979年のイラン革命から国交断絶&経済制裁
→おかげでイランはクレカすら使えない
イスラエルとイランの関係
→イラン革命前はもともと仲が良かった
→革命後、実質アメリカの子分(あるいは親玉)なので嫌いになる
ヨーロッパとイランの関係
→直接的被害はないがアメリカ追従なので厳しい対応に
→それにイランが反イスラエルを打ち出すのを見過ごせない
サウジアラビアやエジプト(アラブのイスラム諸国)とイランの関係
→王族支配の国家が多く、イラン革命(王政の打倒)が波及すると困る
→そもそも宗派も違うし、対立が明確化してからはイランか武装組織支援してきて邪魔
早い話、西欧諸国と仲が良い国から締め出されてるわけです。
結果、イランが比較的仲が良いのはロシア、中国、パキスタン、北朝鮮….あとはインドなんかもそうですね。
で、これらの「仲が良い国」も別に同盟関係ではなくて、「メインの西欧諸国からハブられた集団の集まり」に近いです。(第二次大戦の日独伊みたいな)
実際、イランがイスラエルに攻撃されても助ける国は出てこないですよね。
イスラエルを批難はするし、ロシアや中国が仲介に乗り出そうとはするけど、戦いに加わってまでイランを守るか?と言ったらそんな事はありません。
逆に言うと、日本のように「アメポチだからイランに厳しく当たらざるを得ないけど、本来は別に対立する理由もない」国が周辺以外には結構あるのが実情です。
意外とアメリカが嫌いではないイラン人
もともとイランはアメリカともイスラエルとも仲良しでした。
イラン革命以前の様子はGoogleで検索してもらえばわかりますが、ミニスカートとか履いてる女性が街を歩いてる中東でもピカイチの西欧国家です。
ところが1979年のイラン革命において、アメリカ大使館が選挙され人質が取られる事件が発生し、アメリカ資産もすべて差し押さえられました。
以後、アメリカはイランが大嫌いに。
そしてイランもアメリカと、限りなくアメリカに近いイスラエルを敵視するようになりました。
イラン人が大使館を占拠したのは大いに問題がありますが、それまでの過程は99%アメリカが悪いので(あと例によってイギリス)、この時点ではアメリカの逆恨みです。
ちなみに、テヘランの旧アメリカ大使館は観光名所になってます。
アメリカへのプロパガンダにあふれていて、正直これだけ見るとイラン人は国家から国民に至るまで、アメリカ人憎しで生きてるように見えます。

では、現在のイラン人もアメリカが大嫌いなのか?
国家としては相変わらず「アメリカ許すまじ!」というプロパガンダを展開しまくってますが、イランの1人1人のレベルで言うとそうでもない印象です。
少なくとも、僕の出会ったイラン人はと言うと…
・アメリカの象徴たるコーラとハンバーガーを食べ
・iphoneを持ちgoogleで検索をしてyoutubeやインスタを楽しみ
・何より自国の通貨(リヤル)よりもアメリカのドルを欲しがる
自国通貨のイランリヤルは全く信用がない(1ドル=80万リヤル)ので、現地イラン人ですらドルでの支払いを受け付ける事が多いし、何なら「ドルで払ってくれ」とすら言われます。
もちろん、アメリカが好きかといえば別だと思います。
特に1979年のイラン革命を知っている世代は、西欧的な文化の良さを知っている反面、「そもそも革命起こすきっかけ作ったのはアメリカ人じゃん」という気持ちもあるでしょうから。
ただ、日本に対する中国人や韓国人と同じように、「日本政府は好きじゃないが、日本の商品やコンテンツ、友達として個人レベルで付き合うのは好き」なんて感じと同じではないかなと。
どんなに嫌いだろうと、面白いものは楽しみたいし、便利だと思うものは使いたい。恐らくどんな国においても共通する点ではないかと思います。
実は宗派の争いではない?サウジ等のアラブ諸国の関係
イランに限らず、中東って宗派対立で戦争してるイメージがありますよね。
でも、実際には宗派対立は理由の1つに過ぎなくて、「地域の覇権争い」「自国の体制を守るための争い」だと思ったほうが良いです。
石油王なんて言葉があるように、アラブって王族が存在する国家が多いので、イランのような「王様を追い出しちゃう革命」が自国で起きたら困ります。
だからアラブ諸国はイランを警戒するし、イランも「各国のシーア派団体を支援する」という名目によって、敵対国家の力を削ごうとする。
(これがたまに名前を聞くヒズボラとかフーシ派とか)
つまり表面上イランは
「今のスンナ派は欧米に毒され腐っている!」
「彼らを正すには正しいイスラムの教えが必要だ!」
「故に各国で弾圧されているシーア派組織を支援するのだ!」
という宗教的な目的で動いているように見えて、実際はもっと現実的に「自分の国(そして体制)を守り、あわよくば影響力を拡大したい」という側面も持っています。
これ、他の国からしたら迷惑ですよね(笑)
だから「テロ支援国家」という扱いを受けるわけです。
イラン政府が心の底から「シーア派という正しい教えを広めるための聖戦をしている」かといえば微妙で、実際はパワーゲームのお題目としての側面もあります。
■宗教戦争について
過去のどんな宗教においても、宗教戦争は「お題目」である事が多いです。
十字軍とかも、「教皇の威光を示したい。(でなければ皇帝との権力争いに勝てない)。そうだ!聖地を奪還して神の威光を示せば、俺のほうが有利な立場に立てるぞ!」とかですね。
そして参加する兵士も兵士で、天国への切符(キリスト教的に天国へ行ける確約が取れる事が非常に大事)を得ることが目的で、心の底から「神のために」という人ばかりではありませんでした
イスラエル攻撃を受けてのイラン人の反応
2025年6月13日にイスラエルがイランの首都テヘランを空爆しました。
僕はその時、イランのヤズドという街に滞在しており、その後タブリーズという北西にある街を通ってイランから脱出したのですが…イラン人の反応が意外でした。
「イスラエルに死を!」
みたいに声を荒げる人とは全く出会わなかったんですね。
いや、根本的にはイラン人はイスラエル嫌いだと思うんです。
実際「イスラエル bad(悪い)」って言ってくる人は結構いました。
けど、真顔ではなくすごく軽いトーンであって、「心の底から憎い、ぶっ殺してやる」みたいな雰囲気は感じませんでした。
それどころか僕が出会ったタクシー運転手の1人は…
「アメリカgood!イスラエルgood!」
「ホメイニ!ハメネイ!(最高指導者)首切りジェスチャー」
要はイスラエルやアメリカに、イランの現政権を倒してもらいたいと思ってるイラン人も居るってことです。(ちなみに日本はgoodを何回も連呼してもらえました)
他のイラン人とも話したのですが、とにかくイスラエルを真顔&全力批難する人に出会わない。
「(日本のヤクザの話になったとき)イランのヤクザはガバメント(政府)だよ」
「(政府が怖いから)イスラエルが怖いと言うことも難しい」
「(ネット閲覧制限に対して)ああ、いつものことね(苦笑)」
イスラエルはムカつく。
本当なら声を荒げて抗議したい。
けど、自国の国際的な立場も理解しているし、何なら自分たちもネット閲覧制限とか、経済制裁とか、宗教警察とかイラン政府によって押さえつけられてる部分もある。
だからイスラエルを思い切り批難したいところだけど、後ろめたさやら自国政権を応援したくない気持ちやらで、怒りを100%イスラエルに向ける事ができない。
このあたりは第二次大戦で敗戦国になった日本と似てるかもしれません。
東京大空襲とか原爆投下とかはどう考えても一線を超えた例なのに、「でも悪いのは自分たちだったから…」と素直に文句を言えないというか。
イラン人は政府をどう思っているのか?
ザックリ言うと、「しらけ」ではないかなと。
実はこの感覚、僕自身が感じたんです。
イスラエル侵攻の2日後にイランのテレビが見られるホテルに写ったのですが、ひたすら勇ましいプロパガンダの映像を流してるんですね。
こういうのです。
いや、確かに戦意高揚は大事ですよ。
けど、自国の経済や軍事力がハリボテなんてのは国民は普段からわかっているし、ましてや「アメリカをぶっ倒せ!」なんて言われても「いや、普通に無理でしょ…」としか思わんわけです。
ネットのない時代ならテレビ放送だけで隠し通せたかもしれませんが、現実には戦車の隊列やら飛び交うミサイルやらの映像を見せられるたび、現実とのギャップを強く感じてしまうというか。
おまけに、イランって何かあるとすぐ自国インターネットを締め付けます。
もともと特定のサイト(特に西欧の息がかかったサイト)にアクセスできないのですが、平時はVPN(抜け道)を使えばインスタとかyoutubeとかも見れるんです。
でも、イスラエル侵攻後は今まで使えていたVPNも使えなくなり、ホテルのWifiも含めてネットがほぼ機能しなくなりました。
仕事もできない。
情報収集もできない。
その上で延々と「アメリカ倒すべき!」「イラン最強!」みたいなテレビ映像を延々と見せつけられる。
「イランが攻撃されることは許せない。応援したい気持ちもある」
「でも、ネット検閲して困ってるのはイラン国民じゃん」
「それって本当に国民のためを思ってくれてるの?」
普段自分たちが我慢を強いられており、イランが国際的に優等生から程遠いことも理解しているイラン人からすれば、100%素直な気持ちで政府を応援しきれないのだろうと思います。
第二次大戦の日本における大本営発表を見せられてる状態に近いんだろうなと。しかもネット全盛で、周辺国や自国の内情が格段にオープンになったこの時代にです。
じゃあイラン人はイスラエルを応援するのか?
政府に良い感情を持っていないイラン人がいるのはお話した通り。
そしてイスラエルはともかく、アメリカに対しては別に嫌いとも思っていない人が、若者を中心にそれなりにいることも事実です。
かといって「イスラエルやアメリカに独裁者から開放してもらいたい」と考えているイラン人がどれだけいるかといえば、また別です。
特に戦争が長引いてイラン側の死者が増えたり、今まで通りの生活を送れない状態が長く続いた場合、
「こんな苦しい思いをしてるのはイスラエル(&アメリカ)のせい」
「誰も助けてくれないし、結局は核兵器持つしかないじゃん」
とイラン国民と今の政権が向いてる方向が一致するはずです。
そしてアメリカ等が出てきて一瞬で吹き飛ばせば、イランは大量の難民&恨みを持ったテロリストを生み出す「いわゆる中東の危険国家」のイメージそのままの国になるでしょうね。
ちなみに内戦前のシリアの人口が約2000万人で、イランの人口は4倍の8000万人なので、この人たちが難民になったとしたら…お察しのとおりです。
その他、イラン人の特徴
ここまでは全体的に暗くてマジメな話でしたが、イラン人の実像がよりわかりやすいように、旅をして感じたイラン人の印象をいくつか紹介します。
イランを旅した人は「イランはすごく人がいいよ!」と口を揃えて言うのですが、僕もまさに同じ印象でした。
お店の前で注文方法を試行錯誤してたら見知らぬ人が助け舟を出してくれるし、宿を代わりに探してくれるし、バザールを案内してくれた挙げ句ランチまでおごってくれた人もいます。
これがインドだったら、「案内は無料だぜ!」と言った挙げ句、散々知り合いの店を連れ回され、最後には「案内してやったんだから金を寄越せ!2000ルピーだ!」となることうけあいです。
(もちろん、イランも観光客が少ない今だからこそ人々が優しいのであって、観光客が増えまくった暁にも、同じような評判を維持しているかは分かりませんが…)
芝生があればどんな場所でもピクニックしてます。
何なら砂漠(荒野のイメージ)とか、駐車場で自分の車のすぐ後ろにシートを引いてとか、やたらピクニックをしたがる人種です。
その昔、イラン人が東京で偽造テレカを売ってたという噂は僕も聞いていますが、彼らが代々木公園に集まっていたのは、大きい芝が在るからでは?と勝手に思ってます。
・恐らく20円くらいのパンで140円取ってきたクソガキ
・チンチャンチョン!とかけてきたガキ2人組
要はだいたい10代~20代前半のガキです(笑)
あと、よくガン見してきます。単純にアジア人なんて滅多に居ないからではありますが、興味本位とはいえクスクス笑いとかされる時はちょっと嫌ですね。
イランにいるアジア人=中国人として認識されるので、初手は100%ニイハオです。
日本人だよって言うとそれなりに好意的な反応が返ってくる人も結構います。
「おしん」とか「ケン・ワタナベ サムラーイ」とか「ホンダ トヨタ」とか「アニメ マンガ」とか「ジャパニーズ プロダクト グッド」とか。
少々イメージが古いというか、必ずしも今の日本と一致しない側面もありますが、日本人に悪い印象を持っている人は少ないと考えて良いです。
インドもそうなのですが、パートナー関連の質問の順番がやたら早い。
日本だと「初対面でいきなりパートナーの話題は…」と考えるし、そもそも別に重要度の高い質問だとも思わないですよね。
恐らく文化的なものだと思いますが、儒教文化圏の日本人がいち早く相手の年齢を確認するように、イラン人にとってパートナーの有無は大事なポイントなのでしょう。
壮麗なモスク、手作業で色が塗られた数々の芸術品、そしてティッシュボックスやら空港のトイレに至るまで芸術を忘れないのがイランの人たちです。
そもそもイラン人って伝統的に文学や芸術に強く、オスマン帝国皇帝なども「普段はトルコ語、神の言葉はアラビア語、文学はペルシャ語」と使い分けていたそうです。
それにトルコ&アラブ世界において政治を動かしていたのもペルシャ系(官僚やシステム運用の蓄積がある)と言われており、どちらかといえば武力よりも知恵の民族です。
長年にわたる経済制裁のせいで2025年6月時点で1ドル80万イランリヤルです。
つまり、200ドル(3万円いかないくらい)をイランリヤルに交換するとこうなります。

しかも数字の表記が僕らに馴染みのある「1、2、3…」じゃないので、ペルシャ流の数字の読み方を覚えないと価格すら分からない。

極めつけはイランには「リヤル」とは別に「トマン」という非公式な謎単位が存在することです。
数字の桁が大きすぎるから省略して表記するため…と思いきや、トマンは0を1つ省略しただけで、旅行者からすると混乱のもとでしかない謎仕様。
そもそもイランリヤルは外国から信用なさすぎてリヤル→その他通貨へ戻すのが実質難しい等、イラン旅行を決意する場合この数字と価格の問題を乗り越える必要があります。
まとめ:イランという国はともかくイラン人は良い人達です
最後に、今回の旅行でお気に入りのビデオを載せておきます。
別になんてことない動画なのですが、すごく素朴というか、すごく楽しそうじゃないですか?
ちなみにこの場所は「世界の半分」のキャッチコピーでおなじみ、イスファハーンのイマーム広場野中です。
朝のかなり早い時間(6時半とか)に広場の撮影をしようと思ったら、なんかすごく自分の中にクルものがあったので、思わず撮影しちゃいました(笑)
でも、今はそんなイスファハーンも攻撃対象に…
イランとイスラエル、どちらに利があるのかは分かりません。
どちらも言い分はいくらでもあるでしょうし、「こっちが正しい」「あっちが悪い」と言いたくてこの文章を書いたわけではないので。
少なくとも僕が旅行をした体感として、イランは人も街もすごく良かった。
決して「話の通じない狂信者&テロリストの国が、然るべき罰を受けているわけではない」という事をお伝えしたくて書いた次第です。
それに、イランは観光地としてのポテンシャルもかなり高いです。
・ステンドグラスが美しいシーラーズのモスク
・紀元前に作られたペルシャの神殿ペルセポリス
・世界の半分のコピーで有名なイスファハーン
・鳥葬で有名なゾロアスター教の聖地ヤズド
・ペルシャ絨毯、陶器、銅器など芸術的な品々
・食事も日本人の口に合う(そしてすごく安い)
この文章を読んで、少しでもイランという国に興味を持って頂けたら幸いです!!